大阪府堺市出身のロックバンド、Shout it Out(シャウト・イット・アウト)が先月26日に東京・新宿LOFTで、ワンマンライブ『EP「これからと夢」リリース記念ワンマンライブ~これから~』をおこなった。
Shout it Outは2012年に結成。10代アーティストのみによるロック・フェスティバル『未確認フェスティバル』で初代チャンピオンに輝き、頭角を現す。2016年7月にメジャーデビューを果たしたが、同年9月にベースのたいたいとギターの露口仁也がバンドを脱退、以降はボーカル・ギターの山内彰馬とドラムスの細川千弘の2氏を正式メンバーとした体制で活動を続けている。この日は最新EP「これからと夢」のリリースを記念して行われたワンマンライブだったが、メジャーデビューを迎えた年の締めくくり、同時に現在の体制で新しい年に臨む決意を表明する意味でも、彼らにとっては重要なステージであったに違いない。
「始まりの笛」が、その時会場に鳴り響いた
この日、ライブのチケットは事前にソールドアウト。開場前から大勢の観衆が会場の外に列を成していた。その誰もが「Shout it Outに早く会いたい!」と思いを表情に募らせていたようにも見えた。やがて開場時間を迎え、さらにスタート間際になると会場は満杯。スタート時間を程なく過ぎると、会場は暗転しピアノの旋律によるSEが流れ始めた。そして暗闇の中、観衆の拍手に迎えられメンバーがステージに登場する。現れた彼らは皆フロアに向かって一礼。そしてセッティングを終えると、細川のもとに集まり拳を合わせ、叫びとともに一発の気合いを入れた。「っしゃあ!」
やがてピアノの音は途切れ、会場はギターのフィードバック音やベース、ドラムスの音に満たされた。オープニングナンバーの冒頭のメロディを山内が叫ぶように歌い、続いてさらに叫んだ。「行こうぜ、新宿!」その声に応え、観衆は大きな歓声を上げ、右手を掲げた。オープニングナンバーは最新EP「これからと夢」のリードトラックでもあり、アニメ『DAYS』のエンディングソングにも選ばれたナンバー「DAYS」。まさしくその冒頭の歌詞の通り、この日のステージの「始まりの笛」が会場に鳴り響き、皆が待ちわびた時間が動き出した。
「新宿LOFTをソールドアウトに」一つの夢がかなった、その思いをさらに募らせて
Shout it Outの持ち味は、聴くものをグイグイと引っ張ってくるような、疾走する8ビート。細川のドラムスとベースのサウンドが強力なグルーブを生み出し、Shout it Outサウンドの土台を形作る。そしてしっかりと物語を紡ぐような、山内のボーカルがその土台の上で、Shout it Outの世界観を完成させる。彼が歌うメロディラインは1フレーズの“句切れ”が長く意識されており、そのフレーズ毎の物語をしっかりと描いているため、聴くものは曲ごとに滲み出るメッセージをはっきりと受け取ることができる。序盤は「あなたと、」から「風を待っている」まで一気に駆け抜け、観衆の気持ちをしっかりとステージに引き付けていた。
ステージ中盤になると「雨哀」のような4つ打ちにアクセントを置いた16ビートなど、序盤とは異なるShout it Outの姿を映し出す場面も見られた。初めて東京に現れた時はまだ何者でもなかった自分たちが、誰も見向きもしてくれないライブハウスで悩み苦しみ続け、この日ようやく会場をソールドアウトすることができるようになった。その事実を改めてかみしめる山内。「新宿LOFTをソールドアウトすることは、僕らの一つの夢だった」と細川はそう語り、細川と同じ気持ちであったことを明かす。中盤にプレーされたのは、彼らがメジャーデビューする前の楽曲を中心に構成されていたが、その意味でも躍動するビートだけでは見えない、彼らのまた違った一面が垣間見られた。
時にさりげなく入る山内のファルセット(裏声)も、彼の歌にある魅力の一つ。長いインターバルを持つ歌のフレーズの中、時にアクセントのように入るこのファルセットは、メロディで描かれるイメージを縦にも横にも広げる。聴くものはそこに描かれる世界を、フレーズの着地点までしっかりと見極めて、彼らが歌で表現しようとしているものをしっかりと感じようとする。そんな雰囲気が「花になる」からワルツの「トワイライト」、そしてこの日初披露となった未発表の新曲、さらには「これからのこと」と続く歌の中で広がりを見せ、聴くものの感情を高ぶらせていった。
「どこまでも行こう!」これからの躍進を誓った一言
そしてステージも大詰め。山内は語り掛ける、楽しさは、ここにはないほかの場所で、辛いことや楽しいことがたくさんあるからこそ、そう実感できるのだと。そして改めてここまで来た道のりの厳しさ照らし合わせながら「また会える日のことを思って、残りの歌を歌います!」と、エンディングまでの覚悟を決める。終盤は「若者たち」から、まさに彼らの真骨頂ともいえる、疾走するビートが続く。観衆がサビのメロディに合わせて歌う声を、さらに大きくしていく。「どこまでも行こう!」そう叫んだ山内の言葉とともに、続けたラストナンバーは「青春のすべて」。まさに言い残すことはないくらいのエネルギーを発し、観衆を熱狂させたShout it Outは「ありがとう!」の一言とともに深い一礼をフロアに送り、ステージを去った。
なおも続くアンコール。その言葉に応え登場した彼らは、改めてこの日を迎えた礼を告げながら、これまでミュージシャンとしての動きを止めようとしたことを明かし、それでも”ある何か”のためにそれを思い直していたことを振り返る。この日ステージから見えた、会場を満たす人、そして人。この景色も、彼らを思い留まらせ、勇気づけた理由の一つに違いない。そして2017年春には、いよいよ彼らの初となるフルアルバムがいよいよリリースされることが告げられると、フロアは再び大きな歓声に包まれた。「これから僕らがどのように道を進んでいくか、その方向性を示す一枚」と、アルバムに対し自信の表情を見せる山内が、その心境を明かす。そんな自分の思いを実証するかのように、春にリリースされるアルバムのリードトラックとなる「青年の主張」を披露、そしてこの日最後の曲となった「光の唄」へ。彼らが夢にまで見たというステージは、こうして終わりの時を迎えた。
バンドも観衆も、まさにShout it Out=「大声で叫ぶ」。皆がそのサウンドの中で、内に秘めた何かを叫び尽くした。折しもこの日の前日、25日は細川の20歳の誕生日だった。この節目の時に細川は山内とともに成人となり、またバンドは1ステップを踏み込んだ。「新宿LOFTをソールドアウトに」という夢が叶った今、さらに彼らが思い描く新しい夢は大きく膨らむ。ファーストフルアルバムのリリースも控え、大きなステージに向けての歩みを進める彼らの見通しには、一遍の死角も見当たらない。そう思えるほどに、この日会場を埋めた彼らとファンたちには、強い気迫も見られた。果たして彼らはどこまで成長できることだろう? その真価が問われる新たな年が訪れる。(取材・桂 伸也)
セットリスト
Shout it Out EP「これからと夢」リリース記念ワンマンライブ~これから~ 2016年12月26日 @新宿LOFT 01. DAYS encore |




