北海道在住の5人組ガールズバンドDrop'sが8日、北海道・札幌cube gardenでワンマンライブ「SWEET JOURNEY BLUES」を開催した。今回のライブをもって奥山レイカ(Dr)が、腱鞘炎と神経脱臼によりバンドを脱退。現ラインナップ最後のライブには多くのファンが詰めかけ、ラインライブでの生中継も実施された。全24曲を演奏し、5人で手を繋ぎながら、最後レイカは「ありがとうー!」と叫び地元のファンへ感謝の気持ちを示してステージを去った。
昨年秋にDrop'sは、左腕に痛みと痺れがあり、医師より腱鞘炎と神経脱臼の診断を受けていた、レイカの脱退を公表。さらに、メンバーの活動拠点を地元の札幌から東京へ移すことも伝えていた。従って地元のファンにとっては今回のライブは特別なものとなった。チケットは即ソールドアウト、急遽、ラインライブの生中継が実施された。
スタート前から、熱気を帯びるフロア。彼女たちはいつも通り、ふわりとステージに現れ、跳ねるようにメジャーデビュー曲「太陽」を披露。続いて「ローリン・バンドワゴン」とアップテンポの開けたナンバーが続く。
4曲目「moderato」はサイケデリックにアレンジされ、作曲者の石橋わか乃(key)の妖艶さと、荒谷朋美(Gt)のワウギターにシビれる。長い手脚でグルーヴを支える小田満美子(Ba)は今日も抜群にハンサムガール。赤いワンピースで軽やかに歌い踊る中野ミホ(Vo、Gt)が「サッポロベイビー!」と叫ぶと、客席から歓喜のレスポンスが上がった。そんな中、普段笑顔の多い奥山レイカの表情が、なかなか見て取れない。
髪が伸びて、女性らしくなった。初めてライブを観た頃、みんなまだ高校生でレイカはショートカットのボーイッシュな女の子だった。小さな身体で、楽しそうにドラムを叩いていた。おそらくロックバンドのミッシェル・ガン・エレファントを意識して、みんなでモノトーンの衣装を着ていた。
あの頃は中野ミホがメンバーを牽引していた。しかし、今は違う。音楽性は華やかに多彩になり、みんな思い思いのファッションで、それぞれの個性を存分に活かしたパフォーマンスをしている。
ライブ中盤の「カルーセル・ワルツ」から、メロウなミディアムチューンへ移行。恋愛とも憧れともつかない、淡く繊細な心の機微を3拍子のゆるやかなリズムにのせて描いていて、何度聴いても胸が熱くなる。この楽曲の芽が名曲「どこかへ」と開花したことは想像に難くないが、中野ミホの歌や曲がどこか「懐かしい」のは、ブルースやフォークや昭和歌謡的なサウンドを踏襲しているからではない。今や失われつつある、あの頃の若者にあった、内面のしんとした静けさの中にも秘めたる情熱をもっているからだろう。
再びアップテンポの「アイスクリーム・シアター」で、メンバー全員がレイカのほうを向いて演奏する。ようやく笑顔になるレイカ。中野が「この5人でのライブはこれが最後になります」と話すと、レイカはひょこっとお辞儀した。誰もそれ以上言葉を発することなく、歌われたのは「さらば青春」。中野が高校卒業時に、当時の気持ちを書いた曲だ。<じわじわと でも確かに 変わってゆくのさ♪>
新曲「RAINY DAY」のあとに披露された「コール・ミー」では、レイカが、これまでを噛みしめるように、振り絞るような必死の表情で渾身のプレイを見せた。ダブルアンコールの「未来」まで全24曲。ラストはレイカを真ん中に5人、手を繋いでお辞儀。レイカはホッとしたような笑顔で「ありがとうー!」と叫んだ。
涙はなかった。みんな笑っていた。同じ高校の軽音楽部でたまたま出会った5人が、最初に受けたコンテストで優勝してから、約7年。どこか少年のように照れ屋でべたべたしない彼女たちらしい、信頼と愛情をここに見た。
<きっと新しい風が吹くのさ♪>新曲の中のワンフレーズ。大丈夫。彼女たちには希望しか見えない。(文・原田早知)







■セットリスト
01.太陽 Encore W Encore |