シンガーソングライターの近藤晃央が23日に、Zepp DiverCity Tokyoでワンマン公演『近藤晃央 5th Anniversary Live「KAIKAKI」』を開催した。メジャーデビュー5周年を記念しおこなうというもの。会場にはセンターステージも組まれ、360度のオーディエンスに囲まれながらのパフォーマンスで魅了。13日にリリースされたばかりの新曲「存在照明」やバイオリニストのNAOTOと2人で「六月三日」など、アンコール含め全19曲を熱演した。近藤はライブタイトルの意味について「自分の中で生まれた曲が、誰かの中で育って花になっているかも知れない」と、想いを綴った。この日、ONE MAN TOUR 『damp sigh is sign』を12月1日から東名阪でおこなうことを発表した。
誰かの中で育って花になっているかも知れない
会場にはセンターステージが組まれ、この場所でどの曲が演奏されるのかという期待感が、開演前から感じ取れる。メインステージはブルーのライトが後方の幕に投影、神秘的な模様を映し出していた。通常ドラムセットがある場所にはストリングスカルテットのお立ち台、そのためドラムセットも右手方向という配置。
ゆっくりと会場の明かりが落ち、雷鳴、鳥のさえずりなど自然音が会場に響く。そのなかをバックバンドのメンバーに続いて、近藤晃央がステージに登場。アコースティックギターを手に取り、5周年記念ライブは「つづる」で幕を開けた。NAOTO率いるストリングスカルテットの叙情的な響きとバンドサウンドの融合。そして、近藤の存在感のある歌声は集まったオーディエンスに感謝を告げるように紡いでいく。「グラデーションフライ」や「仮面舞踏会」など定番曲で心躍らせ、「理婦人ナ社会」で体の内側から響いてくるような、鮮烈な歌声で会場を席巻。様々な模様に変化する後方の幕の演出も、心情を変化を視覚化するかのように、様々な模様を浮かび上がらせる。
ここで、センターステージに近藤が移動。披露されたのは最新作から「ベッドインフレームアウト」。ファルセットを巧みに使い、楽曲の表情をドラマチックに彩っていく。たった一人のステージはプライベートな空間で歌っているかのような趣を放つ。近藤は「一人のために作った曲が誰かの曲になることを知った5年間でした」と告げ、その空間にプライベートでも付き合いがあるNAOTO(Vn)を招待し、2人で「六月三日」を奏でた。この会場にいる新婚カップルに向けての祝福の歌と演奏によって、温かく優しい時間が流れた。
メインステージに戻り、「この5年間でもうダメかなと思った時があったけど、限界を超えたところに今こうして立っています。いつかその先にたどり着いて、その先にいる自分から呼ばれている」と話し、9月13日にリリースされたシングル「存在照明」を披露。<これは始まりか? 終わりか?>と自問自答するかのように、アグレッシブなサウンドに乗せ展開。オーディエンスもフラッグを振り上げ、その問いに応えていくようだ。
ライブはラストスパート。高揚感を煽っていくアッパーチューン「ビビリーバー」に突入。生のストリングスがさらなる躍動感を加え、ギアを上げて加速していく。そして、情熱的なナンバーの「テテ」では、NAOTOの鮮やかなバイオリンソロを披露。ブリッジをしながら奏でるNAOTO。一糸乱れぬ演奏にオーディエンスもエキサイティング。
近藤は「一つの節目をライブで迎えられたことに感謝します。今日というこの1日を開く花の時期、“KAIKAKI”とつけました。でも、僕の才能が開花するとか、努力が報われるということではないんです。限界が限界じゃなくなった時に歩めるような気がして、気がつけば限界の遥か先に今立っています。音楽、曲という小さな種をあなたたちに育ててもらっていると思っています。渡した小さな種が5年という歳月を経て、花が咲いているかも知れません。俺はまだ開花してないけど、自分の中で生まれた曲が、誰かの中で育って花になっているかも知れない...」とタイトルの意味を伝える。
価値がないと思っているその壁に、いつか価値を見出せる時が来る
本編ラストはデビュー曲の「フルール」を届けた。<舞い散る花びらのように>という歌詞にリンクするかのように、天井から舞い落ちる紙吹雪のなか、情感豊かに歌を放つ姿に、視線が集中する。多幸感溢れるエネルギーで満ちるなか、近藤はステージを後にした。
アンコールの声に応え、再びステージに登場した近藤。1stアルバム『ゆえん』収録の「わらうた」を軽快なリズムに乗せて開放感溢れる演奏。切なさと楽しさが入り混じった“らしさ”が詰まった1曲。そして、恒例のグッズ紹介のコーナーへ。自身がデザインしたグッズを、愛着を持って紹介していく。
再び近藤はセンターステージに移動し、「1日で人生が変わることがあるかも知れません。自分はまだたった5年です。でも、たった1日で人生を変えられるんだったら、1日が5年分もあったのかも知れない。価値がないと思っているその壁に、いつか価値を見出せる時が来ると思う」と継続させることが重要だと話す。
さらに、「肝心なのは一人ひとりの意志です。意志がなければ押す背中もないし。小さな意志を肯定してほしいという時に、音楽があって良かったと僕自身思ってきました。その時に救ってくれた音楽があったからやりたいと思ったんです」と自身の音楽への原動力とも言える話から、昨年リリースされた「涙腺」を1コーラスをアカペラで披露。歌の持つ力を大いに感じることができた瞬間だった。オーディエンスも静かに佇み、その歌声に浸る。バンドサウンドが入ると壮大なスケール感で2面性を打ち出すようだった。
ラストは弾き語りで「心情呼吸」を届けた。マイクから距離を取り、エアー感を多く含んだ声とギターは、また違った感情が楽曲に注ぎ込まれるようだった。歌い終わった後、近藤は恍惚とも言える表情を見せていた。何かを吹っ切ったかのようにも見え、また新たな物語の始まりを告げるようにライブの幕は閉じた。
【取材=村上順一】








セットリスト01.つづる ENCORE EN1.わらうた メジャーデビュー5周年記念シングル「存在照明」 【初回生産限定盤 (CD+DVD)\2000円(tax in.)BVCL-827~828】 DVD 収録内容 【通常盤(CD のみ)\1300円(tax in.)BVCL-829】 近藤晃央 12月開催 東名阪ワンマンライブツアー情報 ■近藤晃央 ONE MAN TOUR 「damp sigh is sign」 12月1日 名古屋ダイアモンドホール 18:00開場 19:00開演 |