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カサリンチュ、地元・奄美を感じる自由な演奏でツアー終演

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カサリンチュ、地元・奄美を感じる自由な演奏でツアー終演

自由自在な演奏で観客を魅了したカサリンチュ

 奄美大島出身の二人組ユニットのカサリンチュが13日、渋谷TSUTAYA O-EASTで『全国ライブツアー2016「カサリズム3」』のツアーファイナル公演をおこなった。これは5月18日にリリースされた3rdアルバム『カサリズム3』を引っ提げ、全9公演をおこなうもの。ユニット名は奄美の言葉で「笠利の人」を意味する。ギターボーカル・タツヒロとヒューマンビートボックス・コウスケの2人という削ぎ落された編成ながら、時にシリアスに、時にユーモラスに、弾き語り+リズムから2MCまで自由自在なスタイルでオーディエンスを魅了した。その模様を以下にレポートする。

謝罪会見

 開演に伴い照明が落とされると、突然スクリーンに謝罪会見の映像が映し出された。場所は奄美観光ホテルで、カサリンチュが2年半もの間アルバムをリリースできなかったことに対する会見、という設定。カサリンチュの二人が色々な質問に真面目なのかふざけているのか、わからない様子で答えていた。突然の映像にオーディエンスからも笑いが起こった。

 ステージはタツヒロ側にエレキギター、アコースティックギター、ギターアンプ、テーブル。コウスケ側にいくつかのパーカッションとサンプラー、というミニマルなもの。爽やかな楽曲「さあいこう」でこの日のステージは始まった。バンドサウンドではなく、ギターボーカルとヒューマンビートボックスしかいないセットの中、会場からは力強いクラップが起き、それもカサリンチュサウンドの一部として溶け込んでいた。

カサリンチュ、地元・奄美を感じる自由な演奏でツアー終演

故郷への想いを歌い上げるカサリンチュ

 続くのは、ファンキーなセクションも含む「タイムカプセル」。間奏ではオーディエンスがタオルを振る。途中でタツヒロが相川七瀬の「夢見る少女じゃいられない」を引用する場面も。意外な楽曲の組み合わせに戸惑いながらも、彼ら独特の世界観に観客も引き込まれた様子。

 タツヒロは、ギターをアコギに持ち換えて「やまおり たにおり」、「風」、「たいせつなひと」とバラードが続けざまに披露。コウスケがカホンの様なアコースティックなニュアンスをヒューマンビートボックスで表現。ギターをぽろんと優しく鳴らし、左右の足を踏みしめるタツヒロ。高音のメロディも張り上げ過ぎず、シルキーで角がない歌声で会場を包み込んだ。

ヒューマンビートボックスの本領

 続く「new energy」はイントロでコウスケのソロパフォーマンスから始まった。ヒューマンビートボックスらしいビートが放たれる。そのまま、4つ打ちに変化したリズムで楽曲へ突入すると、ドープだった雰囲気が一変。爽やかなベクトルに振りきれた。

 さらに「自力本願」「ナイスダンス」で2MCユニットさながらのラップ調マイクリレーを披露。ボーカルが入れ替わるコンビネーションなどもスムーズで、振り付けまでこなす。オーディエンスへの煽りもお手のもので、コール&レスポンスもテンポ良く決まった。「ナイスダンス」では寸劇風のパートも盛り込んで、ユーモア溢れるパフォーマンスを見せ、オーディエンスをダンスの渦に巻き込んだ。

故郷への想い

 タツヒロは、ギターとヒューマンビートボックスという変化球な編成で、真摯な歌を唄いながらも、それに閉じこもることなく様々なスタイルを取り込んでいる。これは奄美の陽気な土地柄がなせる業なのかもしれない。

 そして、故郷への想いを語る温かいMCから、しみじみとしたムードの「ふるさと」を弾き語る。2コーラス目からビートボックスが合流しテンションを積み上げていった。故郷への情景が心に沁みいるようだった。

 さらに朗々と歌うポップな「あなたの物語」、「New World」。コウスケがリアルタイムでサンプリングしたリズムを出し、その上にアコギが乗る。その後、コウスケはサンプリングビートの上で楽しそうに歌ったり、ハモりも披露した。音楽をやるということは、別にひとつのパートに縛られる必要などない、と改めて気づかされる場面であった。

 軽妙なMC明けに「ラブライバル」、「最近彼女ができまして」でまた楽しい雰囲気を作り、2MCスタイルの「夏が終わる前に」と流れていった。またリアルタイムでビートを作り出すコウスケ。やり直し無しで一発でピタッとサンプリングループを作り出す。タツヒロもサビで気持ちよさそうに踊る。

 本編最後は「やめられない とまれない」。2人のラップ調早口の掛け合いが炸裂。コール&レスポンスからも、自然にオーディエンスが楽しんでいるのが伝わってくる。とてもポジティヴなバイブスがフロアに満ちていた。タイトルにもある<やめられない とまれない>と叫びながらギターをかき鳴らすタツヒロが印象的だった。

カサリンチュ、地元・奄美を感じる自由な演奏でツアー終演

カサリンチュとともに手を挙げる観客

 本編が終わっても、会場にはアンコールを求める拍手が鳴りやまなかった。しばらくして再び登場したカサリンチュの2人は、彼らのデビュー曲である「感謝」を演奏。4つ打ちビートのパワーのある楽曲で、ベースやキーボードがなくてもファンキーに聴こえた。この日の最後は漫画「宇宙兄弟」を読んでつくった楽曲「あと一歩」。「僕らが目指していく場所に進んでいくために、最後に力強くこの歌を歌いたいと思います」と語り、2人でときにハモりながら、ときにユニゾンしながら歌い上げた。

 2人組シンガーソングライターの様なスタイルでこの夜を締めた。オーディエンスからはクラップが自然発生し、最後は会場全体で大合唱。何とも言えない充実感で満たされるエンディングだった。音楽は自由だ、と思わせられる夜になった。(取材・小池直也)

セットリスト

カサリンチュ

全国ライブツアー2016「カサリズム3」
8月13日 渋谷TSUTAYA O-EAST

01.さあいこう
02.タイムカプセル
03.やまおり たにおり
04.風
05.たいせつなひと
06.new energy
07.自力本願
08.ナイスダンス
09.故郷(ふるさと)
10.あなたの物語
11.New World
12.ラブライバル
13.最近彼女ができまして
14.夏が終わる前に
15.やめられないとまれない

Encore

E1.感謝
E2.あと一歩


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