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シシド・カフカ「何が起こるかわからない」新感覚リズム・イベント開催

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 ドラムヴォーカリストのシシド・カフカが6月15日、恵比寿ザ・ガーデンルームで自身が主宰するリズム・イベント『el tempo(エル・テンポ)』を開催した。

シシド・カフカ

 『el tempo』はいわゆる普通に想像するライヴイベントではない。ステージ上には3台のドラムセットを筆頭に、ジャンベやコンガ、ボンゴから、カウベルやマラカスなど多数の打楽器が並ぶ。それらの奏者に対して、100種を超えるハンド・サインを“コンダクター”が操り、指示を出すことで、即興演奏を行うのだ。決まった曲を演奏するわけではないので、始まったセッションがどんなリズムを奏で、どんな展開をし、どのタイミングで終わるのか観客はもちろん、奏者たちもわからない。まさにその場で、その瞬間にしか出会えない音が奏でられる。

『el tempo』

 開演時間を迎えると、ステージに一人ずつ奏者が出て来て、それぞれの楽器から思い思いのリズムを鳴らし始める。今回の出演者は、IZPON、岩原大輔、歌川菜穂(赤い公園)、岡部洋一(ROVO)、金子ノブアキ(RIZE/AA=)、ケイタイモ(WUJA BIN BIN etc.)、KENTA(SPYAIR)、Show(Survive Said The Prophet)、はたけやま裕、MASUO(BACK DROP BOMB,PONTIACS,J)、茂木欣一(東京スカパラダイスオーケストラ)、芳垣安洋(ROVO,Orquesta Libre,Orquesta Nudge! Nudge! etc.)と、まさに日本の音楽界を代表する名うての面々が揃う。

 そして、そこに本イベントの主宰であり、コンダクターを務めるシシド・カフカが登場。観客からの大きな拍手で迎えられると、客席に向かって挨拶をしたのちに背中を向け、奏者たちと向き合い、手を振り上げる。すると、一気にリズムがひとつになる。音が一つの場所に向かって集まる感覚はなんとも言えず、観ているだけでもそこに吸い込まれていくような気分になる。コンダクターからのサインだけがこの場にある唯一の指針だけにテージ上にいる奏者たちが、シシドの手に集中している目線が客席からも見てとれる。シシドの手の振りに合わせて演奏が緩やかになったり、指の本数に合わせておなじリズムが繰り返されたり、目線を受けた奏者だけが違うリズムを奏でたりする。1セッション内でテンポもどんどん変わっていくし、もちろん日本の楽曲によくあるようなAメロ、Bメロ、サビのような展開でもないので、普段、完成された音楽を聴く機会が多い観客たちにとっては未体験の音が次々と目の前で生まれていく瞬間を目にすることにもなる。

シシド・カフカ

 1セッションを終えると、客席から大きな拍手がわき起こる。オープニングから20分近くに及ぶ大演奏だった。だが、息つくまもなくすぐに次のセッションが始まる。2セッション目からは、演奏途中にコンダクターやそれぞれの楽器の奏者を交代していく手法を披露したり、観客も参加型の演奏をしてみたり、楽器だけでなく、奏者がクラップや、自分の体を叩く音や声で表現をしたり、さまざまな“el tempo”の可能性を見せていく。

 コンダクターの交代では、シシドから金子に変わると、急に音に野性味が加わった気がする。おなじ奏者で、おなじサインを使っているのに、コンダクターの色がこんなにも音に影響しているのだと実感。芳垣のタームでは、茂木のドラムとケイタイモのベースとの掛け合いがあったり、楽器同士でのコールアンドレスポンスのようなやり取りがあったりと、単にリズムを奏でるだけでない面白さも体験。また打楽器だけを使っているのに、いわゆるリズムテンポを奏でる楽器と、その上に乗るようなメロディを奏でるような音を出す楽器との重なりで、歌を聴いているような感覚にもなったり、とにかく、“el tempo”の無限性に驚かされた。

シシド・カフカ

 最後のセッションではこの日に見せたさまざまな手法を凝縮させたような演奏で圧倒する。コンダクター・シシドが奏者それぞれの個性を引き出す場面を作りながら、そこに観客も巻き込み、クライマックスに向けてグルーブを一つにし、その熱量を上げていく。そして最後、一つになった音が、シシドの手のひと振りで止むと、客席から大きな拍手が湧き、シシドは笑顔で「ありがとうございました」と挨拶。他の演者たちも一様に笑顔で、お互いの健闘をたたえ合うようにハイタッチをしたり、肩を抱き合ったりと、試合に勝ったスポーツ選手たちのような清々しさが印象的だった。

 アンコールでは10月14日(月・祝)に早くも次の『el tempo』の開催が決定したことも発表。終演後のシシドに少しだけ話を聞くと、これだけのプレイヤーが集まる中で、何が起こるかわからない音楽を作り出せるのが楽しいと笑顔で話していたが、まさに何が起こるかわからない“el tempo”は、自ら体感してみなと、その素晴らしさは伝わらないと思う。必ずや未体験の感覚を味わえるので、まだ参加したことのない人は、ぜひ体験してみて欲しい。きっと病みつきになるはずだ。

公演詳細

el tempo (エル・テンポ) directed by KAVKA SHISHIDO & SANTIAGO VAZQUEZ
日時:2019年6月15日 OPEN 17:00 / START 18:00 /
会場:東京 恵比寿ザ・ガーデンルーム
入場料:スタンディング ¥6,500(税込)ワンドリンク付き
出演者:シシド・カフカ
KENTA(SPYAIR)、IZPON、岩原大輔、歌川菜穂(赤い公園)、岡部洋一(ROVO)、金子ノブアキ(RIZE/AA=)、Show(Survive Said The Prophet)、はたけやま裕、MASUO(BACK DROP BOMB,PONTIACS,J)、茂木欣一(東京スカパラダイスオーケストラ)、芳垣安洋(ROVO,Orquesta Libre,Orquesta Nudge! Nudge! etc.)
el tempo Supervisor:大坪祐三子
主催:デンエンプロジェクト/ケイダッシュ
後援:アルゼンチン共和国大使館
https://eltempo.tokyo/#top

【次回公演】
高崎音楽祭
el tempo (エル・テンポ) directed by KAVKA SHISHIDO & SANTIAGO VAZQUEZ
日時:2019年10月14日(月・祝)
昼公演 OPEN 13:30 / START 14:00 夜公演OPEN 18:00 / START 18:30
会場:高崎芸術劇場 スタジオシアター
入場料:¥6,000(全席指定)*未就学児は入場不可
出演者:シシド・カフカ、サンティアゴ・バスケスほか
http://www.takasakiongakusai.jp/concert/eltempo/


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